2013年度研究プロジェクト

(1) チベット医学の薬材に関する基礎的研究 

チベットにおいて10世紀頃に成立したと言われる『四部医典』(rgyud bzhi)はモンゴル語にも翻訳されるなど、チベット仏教徒の基本的医療聖典として中央ユーラシアにおいて広く読まれ実践されていた。四部医典の第二部である「解釈タントラ」(bshad rgyud全31章)の第19章から21章には、チベット高原とその周辺に産出する薬草・薬木・薬石・動物薬などの名前と効能が列挙されている。本プロジェクトは、この薬材の名のもとに、現場のチベット医が実際にどのような植物・鉱物・動物・昆虫などを用いていたかを明らかにすべく、インドと中国で出版された本草書に記された動植物の学名を集積したデータベースを構築する。

(2) モンゴル帝国継承国家論の再検討

14世紀以降の中央ユーラシアには、モンゴル帝国のハーン(カアン)の血統に連なる家系を君主にいただく多くの政権が成立した。このいくつかは、現存する国家もしくは民族の淵源となっている。これらの政権は「モンゴル帝国の継承国家」と呼ばれることもあるが、実際のところ、君主の血統を除いて、何がいかなる意味で「継承」されたのか、具体的に解明されているわけではない。そこで、ユーラシアの東西からいくつかの事例をピックアップし、制度・エスニシティ・物質文化・精神文化といったさまざまな面から、モンゴル帝国からの継承というテーゼの有効性について再検討を加える。

なお、上記二つのプロジェクトにとどまらず、「研究テーマ」に関連する範囲で、随時単発的な、もしくはある程度の継続性をもつテーマを立てて、研究会・勉強会等を行っていく予定である。