2016~2020年度の研究プロジェクト

中央ユーラシアにおける多言語コミュニケーションの歴史的展開

中央ユーラシアは,固有の諸言語・文化に加えて,中国・インド・西アジア・ヨーロッパ等に由来する多種多様な言語や宗教が交錯する地域であった。そこでは,多言語間のコミュニケーションや翻訳が常に重要な問題であり,外交や文化交流に大きな影響を及ぼしてきた。その実相を探ることを通じて.中央ユーラシア史の再検討を試みる。

ただし,中央ユーラシアは広大な歴史空間であり,時代・地域等を限定しなければ,具体的成果を挙げることは望みえない。そこで,当面は17世紀以降の近世・近代を中心とし,次の二つのサブテーマを立てる。

①清-ロシア外交における媒介言語の変遷:中央ユーラシアにおいて圧倒的なプレゼンスをもった両帝国と,関連する諸地域・民族間の交渉の実相を,媒介言語・翻訳者養成・「誤訳」等の諸側面から検討する。

②チベット・モンゴルの近代:19世紀以降,チベット,モンゴルでは,既存の「帝国」秩序を超える政治・文化的枠組みを構築する動きが見られたが,それは同時に,伝統的な言語・認識の体系と「近代」のそれとの間で,双方向的な「読み替え」を進める営みでもあった。現地の視点に立って,こうしたチベット・モンゴルの近代を読み解くことをめざす。  なお,上記以外に,状況に応じて他のサブテーマを立てることも視野に入れる。